江戸時代に、水野南北という人がいました。
若い頃は、一介のゴロツキにすぎなかった南北。
ある日、人相見から「死相が出ている」と警告されます。
なんとその直後、敵対する刺客に襲われて生死の境をさまよったのです。
このことがきっかけで観相学の道を志し、やがて当時の朝廷から「日本一の人相見」と認められるほどに大成しました。
その南北が、人相を観るにあたって最重要視したのが、観相相手の「食生活」。
どんなに良い人相でも、常日頃から食が乱れていれば運命は悪くなる。
逆に、どれほど酷い人相でも、食生活に慎みを持てば運命は好転する。
この「食と運命の関係性」を悟ってからは、南北の観相は百発百中になった、と伝えられます。
そして時は現代。2010年代初頭。
南北堂を開業することとなる人物は――人生のどん底にいました。
コンピュータ系企業で働くも、激務から心身をひどく病んでしまったのです。
仕事を解雇され、恋人には見捨てられ、貯金も全て失いました。
身近な周囲は精神疾患に理解がなく、病院に通い続ける費用もない状況。
死ぬことばかりを考える毎日。
それでも何かを変えなければと、読書と独学で試せることを試しました。
水野南北という人について知ったのは、まさにこの時期でした。
そうして試した中で、特に成果が出たのが、食事療法。
玄米菜食や断食などの実践を経て、やがて再び働ける状態に回復していきました。
パン屋で働くようになったのは、その後のこと。
「パンでも食事療法的なことはできないのか?」
「運命改善に役立てられるパンは作れないか?」
そう考えるようになったのは、自然な流れだったのかもしれません。
そして出会ったのが、全粒粉でした。
当時は今以上に、全粒粉でパンを作るベーカリーは珍しい存在。
なので仕事とは無関係に、プライベートで全粒粉パンづくりに取り組みました。
ある日、自家製の全粒粉パンを職場の同僚にふるまったところ、
「次はぜひ買いたい!」とのリクエストが。
これが最初のきっかけ。
いつしか、健康的な食を志向する方々にご要望とご支援をいただき、全国でも珍しい「国産全粒粉パン専門店」の立ち上げへと向かうことになりました。
食を通じた健康と運命の改善を目指して。
水野南北という偉大な先人の名を借り、「南北堂」は始まったのです。

